その十四は、第百段から第百十六段までの二十二首。
『伊勢物語』第百一段の和歌、
咲く花の下にかくるる人おほみ
ありしにまさる藤のかげかも
物語を何気なく読んでいても、いくらかふと気にかかる。本文において登場人物が「など、かくしもよむ」と言っているが、物語を読んでいる方も「など、かくしもよむ」と言いたくなるような感じがする。在原行平の家で、藤原良近を客人として招いて宴をしているところで在原業平が詠んだ歌。
本文に、「太政大臣の栄花のさかりにみまそかりて、藤氏のことに栄ゆるを思ひてよめる」とあって、藤原氏のことを藤氏としているので、和歌の「ありしにまさる藤のかげかも」の「ありし」は在氏とも読めるのだろうかなど思う。
「ちはやぶる神代も聞かず龍田川」の歌の旋律は、古今和歌集その十で作曲したものの再録。
試聴
咲く花の下にかくるる人おほみありしにまさる藤のかげかも
花よりも人こそあだになりにけれいづれを先に恋ひむとか見し
おきのゐて身をやくよりもかなしきは都島辺の別れなりけり