催馬楽は、雅楽による伴奏を伴う古代歌謡で、平安時代に貴族の間で流行していた。全部で61曲あるが、そのうちいくつかの曲名(「総角」「竹河」など)は、源氏物語の巻名としてとられている。
その催馬楽の歌詞に、あらたに旋律をつけたもの。その旋律に、ドローン程度の簡単な伴奏を付けた。例えば今様のための作曲でしているように、ピアノで伴奏を付けてもいいのだれど、その場合、催馬楽のテキストの存在を基調としつつも、それは催馬楽を題材として私が作曲した、私の作品というような仕上がりになる。
それは個の表現に基づく「作品」という形式になる。「作品」という概念や形式は、現代においてはありふれて当然なことなのだけれど、催馬楽の歌詞にはそれが合わないような気がした。催馬楽には、「作品」という感じが合わない。なので、作った旋律に対して、ドローン程度の音を付けるにとどめた。もっとも書いていくうちに、付加する音は増えていった感もある。
制作したサンプルの音源では、Synthesizer V AI ついなちゃん ライト版を使用。
37 婦与我
妹と我と いるさの山の 山蘭 手な取り触れそや
貌まさるがにや 疾くまさるがにや
20 更衣
更衣せむや さきむだちや 我が衣は 野原篠原
萩の花摺や さきむだちや
28 梅枝
梅が枝に 来ゐる鶯や 春かけて はれ
春かけて 鳴けどもいまだや 雪は降りつつ
あはれ そこよしや 雪は降りつつ
9 青柳
青柳を 片糸に縒りて や おけや 鶯の おけや
鶯の 縫ふといふ笠は おけや 梅の花笠や