その十一は、十六首。
紀貫之による「あすしらぬわが身と思へど暮れぬまのけふは人こそかなしかりけれ」の歌。「紀友則が身まかりにける時によめる」と題する。
この歌は、「あすしらぬわが身」と「けふはひと」の句が、「暮れぬまの」の有限的時間の概念をともなった句を要として、うまく対比されている。同時にこれらの句が有機的に言葉の意味を高めあって、実存的な色合いを伴いつつ、亡き友を悼む深い心情を表出する、すぐれた構成をとっている。
そして書いてから気づいたけれど、この歌は、2014年にすでに作曲していた。2023年版と2014年版とをそれぞれ比較してみるのもおもしろいかもしれない。
試聴
藤原おきかぜ
君こふる涙の床にみちぬればみをつくしとぞ我はなりぬる
つらゆき
あすしらぬわが身と思へど暮れぬまのけふは人こそかなしかりけれ
小野小町
わびぬれば身をうき草のねをたえてさそふ水あらばいなむとぞ思ふ