伊勢物語 その十五 第百十七~百二十五段

伊勢物語 その十五 楽譜 ページ1
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伊勢物語 その十五 楽譜 ページ6
『伊勢物語』 第百十七~第百二十五段

その十五は、第百十七段から第百二十五段までの十二首。

この投稿で、伊勢物語の百二十五段、二百九首の和歌の旋律を書き終えたことになる。初段から百二十五段まで和歌の作曲をし終えて、何か思うところがあるかといえば特にない。読みとしては、初めから最後まで一通り読んだだけで、何か特別深い読み方をしているわけではない。もっとも第六十五段、第六十九段、第八十七段など、印象的な段はあった。

いずれにしろ、和歌がウエイトを占める歌物語に旋律を実装するという当初の目論見は果たされた。和歌を抽象メソッドと見立て、伊勢物語本文を継承して「朗詠可能な伊勢物語」というクラスを用意することができた。作曲された和歌の旋律の多くは、試聴用に伴奏付けされず、また数字付低音も用意していない、旋律のみの状態であるが、旋律さえあればその編曲や伴奏付けは後から如何ようにもできることであるから、問題ないだろう。

初段から第百二十五段までを俯瞰してみて一つ思うのは、初段から第九段「東下り」までの物語の文章の空気感が、それ以降の段とはいくらか異なっているように思えるということ。特に第十四段、あるいは第十六段の紀有常が登場する段ともなると、かなり雰囲気が変わってしまって、以降、初段から第九段にあった空気感のようなものは、出てこなくなっているような気がする。

伊勢物語全体の構成としては複雑な感じだ。これが全編数行程度の地の文と和歌による短編から成る作品であれば、あるいは、全編それなりの分量のある段からなる作品であれば、もっとシンプルな感じとなるだろう。段の長短が入り混じって複雑なテクスチャーを呈している。その長短の中の短であっても、歌という核があるから、単に分量が短いというものでもない。歌物語にして可能な構成であり、その形式にたいしてゆるやかではあるが男の一代記という内容の組み合わせであることも、この作品を一層独特なものとしているかもしれない。

試聴

うぐひすの花を縫ふてふ笠はいな思ひをつけよほしてかへさむ

年を経て住み来し里をいでていなばいとど深草野とやなりなむ

野とならば鶉となりて鳴きをらむ狩にだにやは君は来ざらむ

つひに行く道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを

数字付き低音

伊勢物語 その十五 楽譜 数字付低音 ページ1
伊勢物語 その十五 楽譜 数字付低音 ページ2
伊勢物語 その十五 楽譜 数字付低音 ページ3
『伊勢物語』 第百十七~第百二十五段 数字付き低音の譜例

数字付低音は基本的に三和音に基づく考え方のための表記なので、二和音の場合は、低音ともう一音の構成音を数字ではなく実音で示している。さらに構成音が低音とそのオクターブ違いの音のみからなる和音の場合は、数字の”0″で示した。

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