三つの今様 その三

阿弥陀仏と 楽譜 ページ1
阿弥陀仏と 楽譜 ページ2
阿弥陀仏と申さぬ人は 『梁塵秘抄』より

阿弥陀仏と 申さぬ人は淵の石
劫は経れども 浮かぶ世ぞなき

494 『梁塵秘抄』 二句神歌より

極楽浄土への往生を目指す浄土教にあっては、その対として地獄の観念が取り扱われるのも道理ということになるのだろうか。もっとも歌に地獄が詠まれるというのはそう多くはない気もする。梁塵秘抄の法文歌の中でも、地獄が詠まれた歌というのはあまり多くない印象がある。阿鼻(地獄)の語が入った歌(241, 214)はあるようである。また法文歌ではないが、現世がこんなだから「後生わが身をいかにせん」と嘆く歌(240, 355)も見られる。

この「阿弥陀仏と申さぬ人は」の歌では、地獄の観念が空間の表象として扱われ、深い淵の底の石のイメージが比喩として用いられている。

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カテゴリー: 今様

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